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鴨が歴史の彼方からやってくる~滋賀県長浜市 鳥新 2005.03.11
▼「鳥新」チラシ
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 「琵琶湖の鴨は、岸から300メートル以上は出てこない、琵琶湖から300メートルは禁猟区であることを鴨は知っているから籾が山ほどこぼれていても絶対に境界線を越えてては来ない」。團さんとコンサートの前の楽屋で伺った事があった。
 先生は、面白おかしく幕前の楽屋で、長浜の鳥新のこと、鮒寿司のこと、長浜大仏のことをお話になった。
 私は、高校が彦根だったので、周辺の歴史や土地勘については、早くに東京に出たとしても判っていたので、食べ物のこと、町や村で行われる祭事、戦国時代のことについてもお話をしていた。そんな経緯があったから是非とも「鳥新」を訪れて見たいと思っていた。そこで、連れと、京都で落ち合って一緒に長浜を訪れることにした。
 鳥新の店は、北陸線長浜駅に降りて伊吹山に向かってまっすぐ百メートルほど先の交差点を左に曲がると、長浜城大手門跡地の道路左側に写真の玄関がある。表から見ると、普通の住宅のような佇まいで、鳥新の看板が無ければ見過ごしてしまう。
 「営業されてますか」
 「おこしやす、どうぞ、お二階へ」
 古い色紙があちこちの壁や待合のベンチに懸かっていて、永六輔、谷崎潤一郎、小島政次郎、水上勉、多くの文人や政治家、政財界、芸能人たちがここを訪れていることが判る。天保5年(1834年)というから、仁考天皇(1817-1846)、徳川家慶(1837-1853)12代将軍の頃に、このお店は開業したことになる。
 琵琶湖湖畔周辺には、鴨を食べさせる民宿やレストランが他にもあるが、「鳥新」のように歴史があるわけでない。
 このような店は、高価だが歴史と見識を売っていると思えば、安いものなのかも知れない。
 スーパーで、何時、何処で捉え、どのような時点で調理されたか判らない様なまやかしの鴨を食べている私は、その新鮮さに感動してしまった。しかし、鍋の素材がテーブルに並ぶまでには、少々、時間がかかった。
 建物も古く、昔懐かしい欄間の彫刻や、多くの人が残した足跡のある紺色の絨毯やがしわくちゃの祖父母に邂逅したように、何だかいやに親しく懐かしく、抱きしめてやりたいような胸が熱くなるような感情にとらわれたのである。
 厚い錫製の鍋がガスコンロの上に、でも、ここは炭にして欲しいだが、ここは、瓦斯コンロだ。女将が、味付けや煮つけをしてくれる。
 「團先生、関西においでなさると、お友達と一緒に良くお見えやしたよ。」
 肉は硬くなるからねぎの上に、味付けは濃くしない、砂糖も少量に入れた方が鴨肉の旨みが出せると、女将は詳細にどう煮付ければ鴨肉のすき焼きが美味しくいただけるかを説明してくれる。
 真っ赤な鴨の肉、
 鴨肉や具を食べ終わったら、だしとたれを追加してください。そのほうがおいしく召し上がれますから、長年の感と女将の年輪が立ち居振る舞いにまで見えて、鴨の味を一層、引き立ている。
 前菜に出された「こつくり」(滋賀では鯉や鮒の肉を薄い刺身の状態にし、湯通しした新鮮な鯉や鮒の卵子にまぶしたものを言い酢で溶いた白味噌で食すのが通常の食べ方)鮒の薄い刺身に、黄色の鮮やかな鮒の卵がまぶされ生臭味のないこりっとしてさわやかな味がわさびにぴったりと合っている。
 久しぶりに、今は、無い、自宅に帰ったような錯覚に陥り、地酒(七本槍だったか、聴きそびれた)を少量いただき舌鼓を打った。
(早崎日出太)
 ・・・・・
「鳥新」は昔通りに長浜の町の一隅に静まっていた。何度も来た事のある店だけれども、いつも来たのは夜だったので、陽の当たっている二階座敷の畳に簾が作る光と影の縞が新鮮だった。
 鴨が運ばれて来て煮える迄を鮒鯖で酒を呑んだ。鮒鮨は木之本のもの、香りも味も上々の上に、辛口で無い地酒「七本槍」によく合った。
 鴨が煮え始めた。この店の鴨鍋には特別に美味しいものがあって、叩きと店では呼ぶが、普通の叩きとは異って、首、肋(あばら)等の軟骨のみを丹念に叩き、摺って、ペイスト状にしたものを煮るのである。これが実に良い。琵琶湖は全面禁猟になったので、昔とは異って、鴨は金沢から送って来るのだが、最近少しは良くなったにしても、琵琶湖の汚染を考えると、全面禁猟にならずとも、その方が味も良いし、健康的でもあると思う。
 琵琶湖の鴨は、保護され、人の投げる餌に群がるその姿を見ていると、今や家鴨(あひる)と変らない。鴨にとって人に馴れると馴れないのどちらが幸せかはよく判らないが、食べるとなると野性の味が大切だという事になる。
・・・・・・・(パイプのけむり VOL.20, P.245「どろん」,P245-251.90.3.2/3.9)
 ・・・・・・世界を旅していて、真の美味遭遇するのはほとんど都会から遥かに離れた
所であるそこには自然の恵みが育てた生き生きとした味が、商業主義とは別の次元で存在し得るからだろうと思う。
・・・・・・・(パイプのけむり VOL.25, P.9.「雲の南で」)

鴨についての記述がある頁  ▼「鳥新」チラシ
鴨に関係のある単語 巻・頁数 タイトル 備   考
鳥新(長浜) 12-106 16.青頸 滋賀三井寺のこと、三橋達也さんから贈られる鴨のこと、森有正さんとのこと
鳥新 20-249 41.どろん 京都、清酒「月の桂」蔵元増田徳兵衛との邂逅。「南一」「たか江」「井雪」「千花」
鳥新(鴨すき、長浜) 21-76 15.箸袋 増田徳兵衛と、割り箸(「市原」の箸と箸袋)の無駄について、箸の国内生産量について
鳥新(鳥、滋賀長浜) 23-136 27.散らかり加減 富山県礪波市市制40周年演奏会、長浜通過、鳥新のこと
20-249 41.どろん 琵琶湖周航の歌、滋賀のこと、長浜、鳥新
、鴨、木の本の鮒鮨のこと。
鴨すき 23-136 27.散らかり加減 長浜の大仏、琵琶湖周航の歌、
鴨頭葱(北九州独特の極細葱) 11-180 26.旦過(たんが)市場 北九州市旦過市場での美味素材のこと、市場名の由来について。
鴨鍋 12-107 16.青頸 三井寺、三橋達也さんからの鴨のこと
森有正さんとのこと
鴨鍋 23-136 27.散らかり加減 長浜通過、鳥新のこと
02-129 25.銅像 三人の女性像に伴侶が居るかどうかの問答
宮城のお堀に居る鴨の描写
17-21 04.渡り鳥の空 「夕鶴」マニラ公演のこと。札幌での札響への旅と。
18-94 15.曇り空 大空真弓とのポイントバローの旅。
23-7 01.ウォッチング 子供の頃の原宿、鳥の種類のこと、ホエールウォツチングのこと
23-50 10.無精卵 各種の鳥と飼育、習性
23-149 30.茸とももんが 都内の編笠茸とももんが
「北京烤鴨」は、別項に解説(未完)/掲載日付、詳細は、「パイプのけむり辞書」参照

     

 
     
              名  刺                               箸  袋